






《内戦 Civil War》 2021 年、映像作品
1948年のカリン族の反乱から始まり、現代のクーデターに至るまで、ミャンマーで続く、世界最長ともいわれる民族紛争を前提として、わたしたちは、家族の夕食を共にするという実践を通じ、「内戦」を表現します。ミャンマーの民族紛争は、何百万人もの市民に莫大な被害を与えています。無数の市民の命、そして国家レベルでの社会的、政治的、経済的状況に大きな影響をもたらしているのにもかかわらず、家族であるはずの兄弟や姉妹たちは、あるべき平和―食べものを分かち合う―の代わりに、権力の命令に従い、不本意にも、互いに殺し合っているのです。身体的、精神的な緊張感を表現すべく、3人のパフォーマンス・アーティストたちは、即興的な身体の動きや感情、少し野蛮で興奮した行動と料理の組み合わせのなかで、家族の夕食を演じています。
食事中に流れる音楽: ミャンマーでは「戦争のシンボル」とされている古い楽曲で、戦争に行ったおじさんへのアンセム(応援歌)だと言われています。
料理と食事: 3人が囲む食卓にはたくさんの料理が並んでいます。多民族国家であるミャンマーには、それぞれの民族ごとに異なる料理があります。この食卓にも数々の民族料理が並んでいます。
縫う: 縫うという行為は、なにかとなにかを繋ぎとめ、修復する行為です。靴を磨く(慈しむ): クーデター以降、平和的なデモが突然銃撃されたり、静かに暮らしていた家に軍が押し入り、人々が傷つけられたり、連れ去られたりしてしまうことがありました。そうした突発的な暴力や危険が迫ったとき、多くの人は靴を履いて逃げる余裕がありません。デモの後、あるいは拘束された人々がいなくなった後の場には、たくさんの靴が残されていました。
鍋を叩いて直す: クーデター直後のミャンマーの街中では戒厳令がひかれ、外出することが許されていませんでした。そうした夜に、市民たちは決まった時間に鍋を叩き、騒音を鳴らすことで抗議を訴える行動を続けていました。ミャンマーの、騒音を鳴らすことで悪霊を祓うことができるという言い伝え的な風習に由来しています。連日鍋を叩き続けると、次第にでこぼことへこんでしまいます。騒音を鳴らすために叩き、そして叩いてへこんだ部分をまた叩いて直す必要がありました。
3AM Performance Art Collective はミャンマー出身の3名のアーティストによるコレクティブです。結成されたのはクーデター前の2016 年。当時のミャンマーのパフォーマンスアートシーンでは、いわゆるコレクティブとして創作、発表活動を行う人々も少なく、「同時代のミャンマーではじめてのパフォーマンスアートコレクティブだ」と、3名は説明しています。上記のステートメントにもあるように、《内戦 Civil War》は、ミャンマーの民族間の対立をテーマとした作品です。この作品はクーデター前に発案された「共に食事をする家族が突如として野蛮な行為(争い)を始める」という、即興的なパフォーマンス作品として実践されていました。しかし、クーデターが起こります。ここで展示されているビデオ作品は、クーデター後、軍の弾圧を逃れながら、パフォーマンス作品をビデオ作品化したものです。またクーデター以前のパフォーマンスの時から、上述したような、いくつかの新しい行為が追加されています。クーデター以降、3名はミャンマーを離れ、バラバラになって暮らしています。
3 AM Performance Art Collective

2016年より、マー・エイ、コー・ラット、ヤダナー・ウィンという3人のアーティストよってミャンマーを拠点として始められたコレクテティヴ・プラクティス。パフォーマンスという実践を通して、批評や表現の抑圧、クィアネスと政治的暴力の複雑さを表現し、ミャンマーにおける社会的・政治的困難を世界的な視点として提起してきた。